はじめに
長年、日本の通信インフラを支えてきたISDN(INSネット)が、いよいよ終焉を迎えます。NTT東日本・西日本は、2028年12月31日をもってISDNサービスを完全終了すると発表しました。すでに2024年1月には「INSネットディジタル通信モード」のサービスが終了しており、残る「通話モード」も2028年末で提供を停止します。
この変化は、単なる「古い回線サービスの終了」ではありません。銀行ATM、駐車場管理システム、POSレジ、警備端末など、さまざまな業務システムに影響を及ぼす大きな転換点なのです。
ISDNとは何だったのか
ISDN(Integrated Services Digital Network)は、1988年にサービスが開始されたデジタル通信技術です。それまでのアナログ回線と比べて高速・高品質な通信を実現し、1つの回線で電話とデータ通信を同時に利用できる画期的なサービスでした。
インターネット黎明期から2000年代初頭にかけて、ISDNは日本のデジタル化を支える重要なインフラとして広く普及しました。
- 企業間取引のEDI(電子データ交換)システム
- 金融機関のATMネットワーク
- 警備・監視システム
- 駐車場管理システム
なぜ今、終了するのか
ISDNサービス終了の背景には、3つの大きな理由があります。
1 回線設備の老朽化
40年近く稼働してきた交換機や回線設備の老朽化が進み、部品調達や保守要員の確保が困難になっています。通信インフラとしての維持管理コストが年々増大しているのが現状です。
2 利用者の減少
光回線やモバイル通信の普及により、ISDN契約者数は年々減少を続けています。
速度差は100分の1以下
3 IP網への全面移行
NTT東西は、固定電話網全体をIP網に移行する「PSTNマイグレーション」を推進しています。これは時代の要請であり、より効率的で柔軟な通信インフラへの転換を意味します。
影響を受ける業界と対策
金融業界
銀行ATMでは、従来ISDN回線(特にINSネット1500)を利用してオートフォンによる緊急通話システムを運用してきました。
主な課題
- • 回線工事に伴う高額なコスト
- • 長期の工事期間が必要
- • 設定変更時の現地作業の負担
- • ボイスワープ等のランニングコスト
解決策
無線式ATMオートフォンへの移行
- ✓ 4G/LTE通信活用で工事不要
- ✓ 月額料金が2分の1〜3分の1に削減
- ✓ 遠隔管理で設定変更が可能
- ✓ 現地作業が不要
流通・小売業界
EDIシステムやPOSシステムでISDN回線を利用している企業が多く、2024年問題として大きな注目を集めてきました。
対策のポイント
- インターネットEDI(Web-EDI)への移行
- クラウドベースのPOSシステムへの刷新
- 取引先との連携を含めた計画的な移行スケジュール策定
警備・駐車場業界
機械警備端末や駐車場管理システムでも、ISDN回線が広く利用されてきました。
推奨される代替手段
光回線+無線回線
冗長化構成
デュアル無線回線
2社の無線回線使用
AI連携
無人運用の高度化
単なる回線切替ではなく、DXの好機として捉える
ISDN終了は確かに対応が必要な課題ですが、同時にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する絶好の機会でもあります。
無線化による設置自由度の向上
電話線工事が不要になることで、設置場所の制約がなくなります。移動式ATMや仮設施設、イベント会場など、柔軟な展開が可能になります。
運用コストの大幅削減
月額基本料金の削減だけでなく、現地作業が不要になることで、保守運用コストも大幅に削減できます。
新技術との連携
AIオペレーターやクラウドサービスとの連携により、業務効率化や顧客体験の向上が実現できます。単なる「置き換え」ではなく、「進化」の機会として捉えるべきです。
今すぐ始めるべきこと
現状把握
自社でISDN回線を利用している機器やシステムを洗い出しましょう。契約内容、利用目的、接続先などを詳細に確認することが第一歩です。
代替手段の検討
光回線、IP電話、無線通信など、複数の選択肢を比較検討します。初期費用だけでなく、ランニングコストや運用負荷も含めて総合的に評価することが重要です。
移行計画の策定
2028年末までまだ時間があると考えるのは危険です。
取引先との調整、システム改修、テスト期間などを考慮すると、今すぐ着手すべきタイミングです。
専門家への相談
通信インフラの移行は専門的な知識が必要です。信頼できるパートナーに早めに相談し、最適なソリューションを見つけることをお勧めします。
おわりに
ISDNサービスの終了は、日本の通信インフラが新しい時代に入ることを象徴しています。この変化を「やらされる対応」ではなく、「ビジネスを進化させるチャンス」として前向きに捉えることが重要です。
無線化、クラウド化、AI活用──これらの新技術を取り入れることで、より効率的で柔軟な業務環境を構築できます。
2028年を見据えて、今こそ行動を起こす時です。